禁止・命令

その花を見るな

いらっしゃいませ。はじめまして・・・ですよね?
あぁ、やっぱり。どうぞお座りください。
今日はどんなご用件でコチラにいらしたんですか?
え、僕にも分からない? ・・・そうですか。いや、なんでもありませんよ。
私のところにはなぜか貴方のような方がたくさん来るんですよ。どうしてでしょうね。
とりあえず、お話でもして頭を整理してみましょう。……そんな顔しないでください。別に貴方がおかしいなんていってませんよ。
まず始めに、ここにたどり着く前に何を見ましたか?
そんなに難しく考えないでください。貴方が見たものをそのまま教えてくだされば結構です。
白いお城に、赤い橋、このふたつだけですか? なるほど。
では次に、貴方が思い出せる一番古い記憶はなんですか? 頭に浮かんだもので結構です。
ほう、小さな子供ですか。これまた珍しい。
大抵の人は空、だとか海、だとか地面、だなんて答えるんですよ。本当に貴方は珍しい。
どうしてだか、自然空間にあるものを最後に見たと答えるんですよね。おかしな話でしょう?
私の質問の方がおかしいとでもいいたそうな顔をしてますね。あぁ、いいんですよ。よく言われますから。
では最後に、貴方の大切なものを浮かべてみてください。
え、ない? まさかそんなはずはありませんよ。ほら、もっとよく考えてみてください。
浮かびました? よかった。ほら、ちゃんと考えれば見つかるでしょう?
それで、浮かんだものとはなんですか?
……花、ですか。何の花かは・・・あぁ、わからない、と。これまた奇妙なものを浮かべますね。大切なものが花だとは。
そんな顔ばかりしないでくださいよ。私が悪いみたいじゃないですか。
そうですね……まぁおかしなところはありませんよ。大丈夫です、安心してください。
あ、ちょっとなにするんですか、そこは触らないでください。僕の大切なものが置いてあるんですから……あーもう貴方って人は。
だめですだめです。そうやって勝手に触らないで・・・あぁ、だから触らないでください。
ほら、もういいですから、早くきた道を帰ってください。早くしないと時間がなくなってしまいますよ。

「帰りたいなら穴を覗くな。進みたいのなら砂を積め。迷ったならば樹を叩け。消したくないならその花を見るな」

なんだそれって……。これは私から貴方へのプレゼントです。さぁ、忘れないうちに早くここからお行きなさい。
私は貴方みたいに暇ではないのです。さぁ、早く。そうです、その入り口を通ってください。
これで貴方とお話するのは最後にしたいですね。もう二度とコチラへはこないように、くれぐれも気をつけてください。

2008.07.13. up.