禁止・命令

どいて

いつもの時間、いつもの道で、君とすれ違う。


たったそれだけのことなのに、僕の身体は自然と締め付けられる。

すれ違うほんの一瞬が、とても大切で愛おしく思えて仕方がない。



でも、今日は違った。



いつもの時間、いつもの場所。そのあとすれ違うだけなのに、それに加えて君は僕を見上げた。



「……邪魔よ、どいて」



小さな身体から発せられた言葉には力があった。

僕はそれに圧倒されながら身体を横に傾けると、君は僕の横を通り過ぎて、その後ろ姿をただただ見ているしかできなかった。



僕の身体はいつもよりも、ぎゅっと締め付けられているようだった。


これは、恋心と言うものなのか。

それとも、恋心と言う名の殺意の表れだったのか。



遠目に君の姿を追いながら、流れていく人並みの中で立ち尽くすことしかできなかった。

2008.07.18. up.