禁止・命令

死ぬなよ

けたたましい音が耳を通り抜ける。

背中を伝わって届いてくる少し低めの体温が、とても大きく、そしてとても優しく思えた。


俺よりも少し高い位置に肩があり、力を少しこちらの背中にかけながら小さな寝息を立てているのが分かる。

それを動かさないよう注意しながら支える。


先ほどからなり続けているけたたましい音が様子はなく、より大きくなっているような気がした。

それと同時に、俺の背中にかかるものも、ズシリと重くなった様な気がした。



「おい、本当に寝てんのか?」



しっかりと後ろを向けない為、相手の表情を確認する事はできなかったが、念のためと声を掛けてみる。


すると、背中にかかっていた重さはふわりと軽くなって消えた。




「……起きてるよ」




そう言うと、離れたと思った背中に相手の背中がピタリとひっついた。


俯きながら目を瞑っていると、耳に声が届いた。




──……死ぬなよ、と。


俺は顔を上げて短く返事を返してから、もう一度汚れた冷たいタイルに視線を落とした。



背中に、ちらばった温度が冷えるのを感じた。





それはまるで、君の存在のようで、僕は後ろを振り返ることができなかった。

2008.07.19. up.