禁止・命令
絶対に忘れるなよ
懐かしい風景に懐かしい匂い。
それを身体全体に行き渡らせると、この場所へ戻ってきたのだと身をもって感じることができる。
数日前とはまったく代わり映えのない風景なのに、なぜか僕はどきりとした。
それは、今ここに僕が足をついているという事実がそう思わせるのか、それとも僕が抱えなければならないものがそうさせるのか。
──……行け、早く!お前は生きて帰るんだ……!
忘れたくても忘れられない言葉が頭を過ぎる。
───……お前が帰るって言うなら、俺達は納得できる。お前に全部託すよ。だから……生きろ。
全てを託した友の声が、あの顔が、匂いが、全てが僕の身体に染み付いているのを再確認させる。
勝ったのは僕。
数日前まであったものを背中に染み込ませたのも僕。
思い出すだけで吐き気が襲う。
言葉も、景色も、色も、匂いも、全てが僕を支配する。
ここにこうして立っていることすら罪であるのに、なぜ友は笑って僕を生かせたのか。
絶対に忘れない。いや、頼まれても忘れることなんてできやしない。
全てを背負ってこれからを生きる。
これが僕に課せられた生きる証であり、罪の証でもあるのだから。
2008.07.17. up.