漢字一文字10のお題

君のぱっちりと開いた瞳がいつもより薄らいでいて、そこから一滴の水が滴り落ちた。
今まで泣く姿を見せたことがなければ、弱い姿さえも見せたことがなかった彼女が、だ。

僕はその姿を見ても、動揺することができなかった。
ただ彼女と一定の距離を置いたまま、上から下へと見下げるように見つめているだけだったのだ。
そして彼女もまた、僕に寄り掛かることなく軽く頭を下げたまま俯いているだけだ。

そんな僕と彼女の間に会話なんて作りだされる筈もなく、どれだけ続いたかも分からない無言の空間が包み込んでいた。
何も音のない空気が、身体に染み込んでくるのが分かる。
それが温かいような冷たいような、気持ち悪い感覚を作りだしていた。

なぜこんなことになってまで、彼女は僕を突き放そうとしないのか。
そして僕も、こんなことになることを知っていてもなぜ彼女から離れようとしないのか。


うっすらと彼女の頬を伝う雫が、他の何よりも美しいと感じてしまう程に、僕は彼女に依存してしまっているから。

そしてまた彼女も、こんな僕の態度に依存してしまっているから。

2008.09.11. up.