海に見る10のお題

青が重なる

真っ白な世界に、僕は絵を描く道具だけを選び持ち飛び込んだ。
目の前に広がっているモノは本当に何も色のついていない真っ白な景色だけで、でもそれが僕の何かを圧倒させて仕方なかった。
最初は道具の蓋に手をかけることさえもできずに、ただそれを眺めているしかなかった。
しかし、一度蓋に手をかけてみると、後の工程は流れていくかのように簡単に進んでいった。
それさえも僕には不思議でたまらなかった。

僕はそこらに広げた道具たちの中から、ひとつを選んで手に取った。
するとそれは瞬く間に色を帯びていく。それを左から右に流していくと、白い空間に一線、色がついた。
色がきらきらと光を見せたあとに、僕は一線、また一線とそこに引いた。
そのせいで、だんだん白い空間が色で埋め尽くされていく。


色で埋められていく空間が、僕はとても美しいと思った。
しかし、色の間に見える真っ白が目に入ると、悲しくも感じた。
何も色がついていなかった先程よりも鮮やかに見えると言うのに、浮き立って見えた白が、僕の手を止めたのだ。


それが僕の中の何かを揺るがし、頭で考える前に手を動かした。
みるみる目の前が違う色で塗り重ねられていく。
鮮やかだった色は消え失せ、たった一色が全てを覆った。
まるで、僕の言葉を代弁しているかのように染まった色を見て、その場に座りこんでしまった。 手の内にあったモノをその中に放り投げると、色はそれを包み、気がつくと、僕もその中に埋もれているのが分かった。


全てを染めてしまう前に、僕は気付くべきだったのだ。


何かに色をつけてしまうことが、その色に染まってしまうことが、自分を塗り変えて覆ってしまうことなのだということに。

2008.07.25. up.