海に見る10のお題

美しく泣き喚け

夜が徐々に更けてくると、貴方は勢いをつけてドアを蹴り破り、私の元から去っていく。
どれだけ引き止めても、貴方が喜ぶような愛を囁いても、何をしてもその時だけは私以外の何かに捕らえられてしまっているのか、決して振り返りはしない。
何かを追い掛けつづけるかのように、真っ直ぐで曇りのない瞳を突き刺していくようにある一点を見つめ続けている。


その場に残された私は、空を切った手を地面に重ね合わせて、いつ漏れてしまうかもわからない嗚咽を必死に喉の奥にしまい込む。
それでも隠し切ることのできなかった丸く透き通った小さなビー玉は、地面に到達する度に明るく陽気な音を立てていった。

そのビー玉は開かれたままのドアから一線に伸びてくる淡い光を中へと取り込みながら、なんとかして私を楽しませようと色とりどりに輝く。
目に映る光はとても美しい。


しかし、どんなに綺麗なモノが手に入ってもそこに貴方がいなければ、何もかもが無意味なことであるのだと、届くことのない貴方へ叫んだ。
私の心と同調してか、少し曇り気味になり、ここら一面だけをしんなりと濡らしていく空が、とてつもなく救いだと思えた。

あぁ、どうか早く私の元へと戻ってきてください。


そう願いながら横たわった身体は少しひんやりとして気持ちが悪いように思えた。
そしてまだ止まる気配を見せないビー玉たちは、横たわる地面の周りを覆うように、ゆっくりと孤を描きながら侵食していった。

2008.07.29. up.