公園
久しぶりに残業もなく、定時で会社をでることができた。
こんな日はいつもより少し遠回りして帰宅するのも悪くないと、普段なら右に曲がるところを真っ直ぐ突っ切った。
毎日仕事で大忙しだった私は、越してきたこの街をゆっくりと眺めながら歩くことなんてなく、夕日に照らされる全ての景色がこんなにも美しいものだと言うことを初めて知った。
私の右側には沢山の家、左側には長々と続く河川敷。その先に続いていた小さな公園に魅入られた私は、こっそりと身を隠すように中へ入った。
夕日が沈みかけだったのもあるのか、目の前には数個の遊具があるだけで、殺風景な景色が広がっていた。
その中で唯一腰を下ろせるブランコに近寄り、上から二本の鎖で吊り下げられた薄い板の上に被さった砂埃を軽く払い除けてから腰を置いた。
地面からあまり高くないブランコが、体のどこかをキュッと締め付けたような気がした。
夕日と同じ色のヒールの裏で地面を掻くと、下からはジャリっと、上からはキィと同時に音を立てた。それを数回繰り返した後、小さく息を吐いて落ちかかっている夕日に目をやる。
全てを自分の色で染めているアイツがなんだか憎らしい。
そんなことを考えてしまう自分を嘲笑っているのか、アイツは先程よりも色を濃くしてまた染める。
その色を網膜に焼き付けてみると、なぜか苦笑いが漏れた。
色までも吸い込むように口を開くと、空気と混ざりあってから綺麗に線を辿るように動いて、頭の1番端っこに辿りつく。
すると何かを思い出すように、網膜には鮮明に色が映しだれでじわりと目に染みていく。
それが過去と今の差を表しているようでとても切なかった。
沢山の荒波に揉まれていくうちに、いつのまにか失ってしまった過去の気持ちが私の中を侵食していく。
夕日の赤さが目に染みるのは、あの頃の純粋さは、もう自分の中には残されていないのだと言われているようで悔しかった。
それを掻き消すように、また夕日と同じ色のヒールで地面を蹴る。
すると同じように地面と吊り下げられた二本の鎖は音を立てる。
ユラユラと揺れる動きに身を任せながら公園全体を見渡すと、やはり全てが真っ赤に染められていた。
それもまた目か体へとじわじわ侵食していくのを感じた。
変わってしまったのだ、私は。
こんな風に夕日はいくら年を経ても変わらないのに。
なのに、ここにいる私だけは、変わってしまったのだ。