10の場所お題

展望台

瑠璃色の空に広がる小さな細かい星たちに両手を伸ばした。
もう少しで届くのではないかと思わせる力がある空は凄いのだと思う。
うーんと小さく唸るように声を出すと、後ろで椅子に腰かけていた幼馴染みが馬鹿にしたように笑う。
コチラはかなり本気で星を掴めるのではないかと手を伸ばしているのに、そんな風に笑われては気分がいいものではない。
それでも、広く繋がる空の上で瞬いている星たちを視界にいれると、とてもいい気持ちになる。

空に夢中になりすぎて、思わず柵から乗り出す体制になる。
すると後ろから首根っこを捕まれ引き戻される。
柵から体を離して後ろを振り返ると、先程まで座りながら本を読んでいた彼がため息を漏らしながら呆れている姿が目にはいった。
そして眼鏡のてっぺんを左手の薬指でくいっと持ち上げる。
レンズ越しに届く鋭い瞳が、何を言いたいのか理解させ、つい目を逸らしてしまう。

私は苦笑いして先程のことをごまかすと、もう一度空を見上げる。
何があっても変わることなく輝く星たちはやはり美しい。
毎年変わることなくそこにあり続けてくれることも、私には嬉しいことなのだ。
顔を空に向けたままでいると、名前を呼ぶ彼の声が耳に届く。
振り返ると、本を片手に帰るぞと囃し立てているのが分かった。

まだここにいると言う前に言葉を遮られ、結局彼に従うことになってしまった。
もちろんこの場所から離れることにもどかしさはあったが、この場所で輝きを見せる星はいつもここにあるということを知っている。
私は空に向かって大きく手を振ると、下でまた私の名前を呼ぶ彼の後を追った。
星はもちろん、あるべき場所で輝いたまま。

2008.08.05. up.