変幻自在10days
つまらない隠し事
カランと何かが蹴り飛ばされる音に中身を一層縮めて身を納める。
相手がゆっくりと、自分の元へと近付いて来ているような気がして、息を吐くことさえも身体が拒んでいるような気さえする。
何も痕跡は残していない筈なのに、自分の身体から一本の線が相手へと延びているのではないかと、何かを取り払うかのように、僕は身体の周りを手で払い除けた。
音を出さないようゆっくりと、それでも早く掻き消そうと手を動かした。
相手には僕の居場所なんて分かる筈がない。
しかし、靴の裏と地面が擦れ合う音が、何もかも見透かしているのではないかと思わせる。
同じ空間に居はするが、ここに僕がいる証拠も確信もないのに、なぜ足音は消えないのかと、どうして居続けるのかとも思わせる。
身体は何かを知らせるように冷や汗を流し始めるが、頭の中からは行動を起こしてはいけないと叫んでいるようにサインを送ってくる。
だが、僕に出来ることはなく、その場で身を潜め息を殺していることしかできない。
なぜ僕はあの時判断を誤ってしまったのだろう。
今更何を考えても無駄なことだと分かってはいるが、それでも過去の自分の選択を恨むことしかできない。
結局同じ目に遭うのなら、最初に認めていればよかったのだ。
そうすれば今、こうして何かに怯えることはなかっただろうに。
後悔しても遅いことは分かっているのに、どうしてもそんなことばかりが頭の中を廻り続けている。
足音はもう、直ぐそこまで近付いているのに。
もうどうすることも出来ないと身体を硬直させると、ピタリと足音が止まった。
何かがやってくると理解した瞬間、身体の表面をねっとりとしたものが伝った。
そして、どこからともなく現れたモノと目が合ったと感じた瞬間、僕はその場から意識を手放した。
2008.08.21. up.