routineお題-仕事編
おはようの挨拶
僕よりも一回りも二回りも幼い彼は、僕の隣に座るとなぜか「おはよう」と言って笑う。
朝、昼、夜、どの時間帯に会っても、第一声は決まって「おはよう」という言葉。
別に、他の言葉を話せないわけじゃあない。
それでも、僕に会うと必ず「おはよう」と言ってから会話が始まるのだ。
勿論僕だって思考を持った人間って生き物な訳だから、その理由が気になってしまう訳で。
いつだったか、彼に、なぜ僕に会うと「おはよう」と言うのか、理由を聞いたことがあった。
しかし小さな彼は、聞こえているであろう僕の声をどこかへ流して、ただ笑った。
その子供らしく、けれどどこか大人びた有無を言わせない笑顔が、喉まで出掛かった言葉を途中で遮断させた。
それと同時に突き刺さる、ひどく鋭い視線が、僕の口からその後の言葉を紡ぎ出せないようにロックを掛けた。
それからは、僕も彼に理由は問わなくなった。
そんな事をしても、きっと彼は僕に笑顔と鋭い視線を浴びせるだけで、何も言わないだろうから。
僕より一回りも、二回りも幼い彼は、今でも僕に会うと必ず「おはよう」と言う。
それが彼の何を示しているのか、僕には到底分からないけれど。
でも僕が、彼にとってハジマリの存在であるのかもしれないということを伝えてくれる挨拶の言葉は──
いつもそこに。
2008.06.09. up.