routineお題-仕事編

いつものコンビニ

人気の無くなったレジの前で、仕事の引継ぎをする為に道具を取り出して台の上におく。
レジの中に溜まった小銭たちを手に取りながら、一番奥に掛けられてある時計を視界に入れる。


指針は丁度10時の方向を指しているのが分かる。
1時間に一度のアナウンスが流れるのと同時に、入り口の自動ドアが音を立てて開いた。


少し前から雨が降り出していたのだろう。
中へ入ってきた男性は、頭と肩についた水をはらったあと、恨めしそうに外の様子を眺めた。

雨は、それを気にも止めずに激しく地を打ち付けた。


その様子を眺めていた所為で、小銭を握り締めていた掌には、じんわりと汗が滲んでいた。


アナウンスのやけに明るい口調と隣で名前を呼ぶ声に、停止していた思考が再び動き出す。
時計の長い針はすでに、15の方向を指していた。



止まっていた手を動かして、引継ぎの続き作業に専念する。
早く終わらせなければ、また店長に愚痴を言われると考えるとたまったもんじゃない。


カチャリ、カチャリと、お金が決まったところへはめ込まれていく。
全てを合わせ終わったところで、口からは無意識に溜め息が零れていた。
こうも毎日同じことの繰り返しでは、最初は不思議でしかたなかったこともつまらなくなってくる。


二つ目の溜め息が口から出ると、コチラへ人影が迫ってきて、レジの上にお弁当とお茶が置かれる。


顔を上げてみると、立っていたのは先ほどの男性だった。
目が合うと、柔らかく微笑まれたもんだから、コチラも同じように笑顔を返す。


「遅くまで頑張ってるんだね」


「え、あ……はい」


不意に掛けられた言葉に、間抜けな表情を浮かべてしまったのではないかと思いながらも言葉を返す。
案の定そうだったのか、男性はクスクスと笑いながら私の方を見てレジに置かれた物を指す。

私は慌ててお弁当とお茶のバーコードを読み込んで、ディスプレイに料金の表示をさせた。


「865円になります」


「じゃあ、これで」


男性の手から1000円を受け取り、レジにも同じ金額を打ち込む。

金額が計算されて表示される前に、お弁当お茶を手早く袋に詰め込んだ。
それが終わると、うまい具合の時間で計算された金額が表示され、その分のお金を救い上げてからレシートをちぎった。


「135円のお釣りになります」


男性の手にお金とレシートを乗っけると、また男性はさっきと同じように柔らか微笑んで「ありがとう」と言って視界から遠ざかっていった。



いつもと何も変わらない筈なのに、接客する側が、接客される側に元気を貰ってしまったような気がした。


明日もきっと今日と何も変わらない。
でも今日は、同じようで、なんだか特別な日だったかもしれない、と。



あの男性の笑顔を真似するように、後ろに掛けてある鏡に向かって笑いかけた。

2008.06.11. up.