routineお題-仕事編

冷蔵庫の中には

俺の頭がおかしいのか、それとも目の前の光景がおかしいのか。


部屋の冷蔵庫を開けると、棚の真ん中に人間が座っていてコチラをみている。
人間、と言っても大きさは掌分あるかないかくらいで、ソレは中に入っている俺の酒のつまみを抱えていた。


何事かと思って目を擦ってみても、ソレはやっぱりそこに存在していて、しまったと言ったような表情を浮かべているのが分かった。


俺が黙ったままソレを見つめていると、手に持っているものを身体の横に置いた。



もう一度、その存在を確認しようとして、今度はその小さい人間に手を伸ばしてみる。
すると延ばした手は、ソレに触れる前に何かに弾かれてその場で静止してしまった。


その光景を見てケラケラと笑う小さい人間と、思考の停止している俺。


やっぱり訳が分からなくて、俺が頭を抱えていると、目の前で何事もなかった様に俺のつまみを食べ始める。
口から漏れた間抜けな言葉に、また小さい人間はケラケラと笑う。



それから片手を俺の方に伸ばして何かをピンと弾くような素振を見せる。
しばらくすると目の前が一瞬真っ暗になって、それからまた明るくなる。


その時にはさっきまでいた小さな人間は俺の視界から消えていて、俺は慌てて冷蔵庫の中を覗き込んだ。
中を見渡す限り、さっきまでいたものはそこにはなく、俺の気のせいだったのだと、瞬時に頭が理解した。



全てを疲れのせいにして、中から飲み物を取りだして冷蔵庫を閉める。


中に、食べかけの俺のつまみが残っていたのは、気付かない振りをして見逃すことにした。

2008.06.16. up.