食後の一服
ベランダの一角から白い煙が上がっているのに気付いて、僕はそれを遠目に見る。
大きい背丈に綺麗な金色に染まった髪、細長い棒を咥えて目を細めるその姿が、とても遠い存在の様に僕の目に映る。
咥えているモノを持つ手が、月明かりに照らされて、光っているようにも映る。
その姿に同姓の僕でさえ、つい見とれてしまう。
その所為で、意識の向いていなかった手が、持っていたものを落とす。
その音がやけにうるさく響いたのか、彼は咥えていたものを口から放して僕の方をみる。
「どうした? 何かあったのか?」
そう言いながら再びソレを咥えて僕の方に寄ってくる。
僕は首を横に振ってから、理由を言えずに俯いてしまった。
すると彼は、僕に合わせるように少しかがんでから、顔を覗きこんでくる。
「な、に?」
「いや、ちょっと複雑そうな顔してたからさ。やっぱり何かあったのかと思って」
そう言うと同時に、彼から白い煙が上がってその場を包み込む。
僕は顔をを上げて、口に咥えられているものをさす。
その動作に訳がわからないと、君は眉を寄せて首を傾げる。
「煙草吸ってる格好がさ、ちょっと格好いいなって思っただけ」
「なんだそれ」
「最初の1本を吸う時だけ、いつもと違って格好よく見えるの。ただそれだけ」
僕から紡ぎだされた乙女チックな言葉に、彼は少し悪戯に笑いながら、僕の頭をぐしゃぐしゃにしていく。
その手が子供扱いされているように思えて、僕はしたから彼をにらみつけるように見ると、置かれた手は頭から引いた。
それから何もなかった様に、彼はまたベランダに戻って、ポケットからお気に入りの銘柄物を取り出して、また火を点ける。
その姿は、1本目には劣るが、やはり僕の目には眩しい物を見たように映って仕方なかった。