routineお題-仕事編
3分間
真っ暗な中に、カーテンを通り越した僅かな月の光だけが差し込んで、辺りをほんのりと明るくする。
その中で、机に覆いかぶさるようにして身体を埋めている、最近この部屋に住み着いた犬みたいなソイツは、小さく寝息を立てていた。
俺は明かりを消したまま、ソイツの隣に腰を下ろして、それから様子を伺おうと顔を覗きこむ。
机と身体を密着させたまま、なんとも警戒心のない様子で目を閉じていることに、なぜだか笑みが零れた。
無意識に頭に伸びた手の感覚の所為か、呼吸が一瞬乱れ、それからうっすらとだけ目を開いたソイツ。
思考を巡らせ、俺の存在をはっきりと確認すると、少し間をあけてからだったが、俺の首にソイツの両手が絡みつく。
それをしっかりと受け止めてから、優しく頭を撫でてみると、なんとも満足したような様子で頭を胸元に擦りつけてくる。
「ただいま」
短く言葉を紡ぎだすと、ソイツは笑って俺を見る。
そして俺と同じように、短くだけ言葉を口から紡ぎだす。
「おかえり」
それからソイツは身体を俺に委ねて再び目を閉じる。
俺が名前を呼んでも、ソイツからの返答はなく、言葉の変わりに小さな寝息だけが俺の耳に届いた。
人間なのか、それとも果たして犬なのか。
どちらにせよ、俺とソイツが言葉を交わして安らぎを与え合ったのは、短いようで、長いような3分間という時間。
俺は身体にすっぽりと収まったソイツを抱えながら、静かに目を閉じた。
2008.06.10. up.